転職エージェントをすすめる記事はたくさんあります。ただ、そのほとんどは「使ってよかった」という立場から書かれたものでしょう。
この記事は違います。私は転職エージェントを使ったことがありません。
2回の転職を、ハローワークと転職サイトで自分で求人を探して進めました。それで転職はできましたし、狙っていた労働条件も手に入っています。
ただ、ひとつだけ後から気づいたことがありました。それを書きます。
この記事のポイント
- 筆者はエージェント未使用。ハローワークと求人検索だけで2回転職しました
- 統計上、エージェントを使わない人のほうが多数派です
- 使わなかったことで足りなかったのは「年収の相場を知る手段」でした
- 「使わない」が合理的なケースもあります。そこも正直に書きます
私は転職エージェントを使っていません
ハローワークと求人検索だけで2回転職した
私の転職は2回です。どちらも製造業から製造業への転職でした。
使ったのはハローワークと転職サイト。ただし転職サイトのほうも、自分で条件を入力して検索し、気になった求人に自分で応募するという使い方しかしていません。スカウトを待つこともなければ、誰かに相談することもありませんでした。
使わなかった理由は「必要だと思わなかった」から
なぜ使わなかったのか。理由は単純で、必要だと思わなかったからです。
求人は自分で見ればわかる。条件も書いてある。わざわざ人を挟む意味がわからない。当時はそう考えていました。
それに、正直なところ面倒でもあったんです。登録して、面談の日程を調整して、経歴を説明して——そこまでする必要があるのか、と。売り込まれそうで気が進まない、という気持ちもありました。
実は、使わないほうが多数派です
「エージェントを使わなかった」と書くと、変わったことをしたように聞こえるかもしれません。でも統計を見ると、そうでもありませんでした。
入職経路の内訳(2022年)
厚生労働省の報告書によると、入職した人のうち経路別の割合は次のとおりです。
- ハローワーク経由:18.2%
- 民間職業紹介事業所(転職エージェント)経由:5.9%
民間職業紹介の割合は、2000年の0.9%から上昇を続けています。一方でハローワークは、2010年の26.2%をピークに下がってきました。
出典:厚生労働省「企業における採用経路の選択動向等に関する調査研究事業 結果報告書」(2025年3月/原データは雇用動向調査)。いずれも2022年の数値で、パートタイム労働者や新卒を含む入職者全体の割合です。
エージェントを経由して入職した人は、20人に1人ほどです。残りの大半は、別の経路で仕事を見つけていることになります。
ただし、伸びてはいます。2000年には0.9%でしたから、20年あまりで6倍以上になりました。使う人が増えている理由は、たぶんあるはずです。
この記事の立場をはっきりさせておきます
先に断っておきます。
この記事で書けること・書けないこと
- 書けること:エージェントを使わずに転職して、何が起きたか
- 書けないこと:担当者の対応がどうだったか、A社とB社どちらが良かったか
使っていない以上、サービスの質や優劣は判断できません。この記事でエージェントの機能に触れる部分は、すべて各社が公式に公開している情報にもとづいています。
使わなかったことで、何が起きたか
条件は希望どおりになった
まず、うまくいった部分から書きます。
直近の転職では「年収は下がってもいいので、残業が少なくて休みが取れるところ」を軸に会社を選びました。そしてその条件は手に入りました。残業は月20〜40時間ほどから、平均10時間前後まで減っています。
自分で求人を探しても、狙った条件の会社は見つかります。ここは強調しておきたいところです。エージェントを使わないと転職できない、というような話ではありません。
ただし年収の相場を知らないまま決めた
問題はここからです。
私は年収が下がることを受け入れて転職しました。想定どおり、年収は下がりました。ただ「その下がり幅が妥当だったのか」を、私は今も判断できません。
提示された金額が、私の経歴に対して適正だったのか。もっと条件のいい求人があったのか。比較する材料を持たないまま決めてしまったのです。
このあたりの経緯は、別の記事に詳しく書いています。
▶ 転職で年収が下がった|残業は減ったのに不安が消えなかった理由
比べる相手が「前職の自分」しかいなかった
自分で求人を検索していたとき、私が使っていた物差しはひとつだけでした。前職の年収と比べて高いか、低いか。
それ以外の基準を持っていませんでした。同じ経歴の人がどのくらいの条件で転職しているのか、私の経験が労働市場でどう評価されるのか。考えたこともなかった、というのが正直なところです。
求人サイトもハローワークも、求人を探す機能は十分に提供してくれます。ただ「あなたの経歴なら、このくらいが相場です」とは言ってくれません。それは求人を探す機能ではないからです。
転職エージェントは何をしてくれるのか(公式情報より)
ここからは、私が使っていないサービスの話になります。各社が公式に公開している情報をもとに整理します。体験談ではありません。
求人を紹介してくれる
もっとも基本的な機能です。担当のキャリアアドバイザーが経歴や希望を聞き取り、条件に合う求人を紹介するとされています。
各社が「非公開求人」を扱っている点も、公式に案内されています。求人サイトには掲載せず、エージェント経由でのみ応募を受け付ける求人のことです。自分で検索していたときには、そもそも存在を知りようがなかった求人ということになります。
書類と面接の準備を手伝ってくれる
職務経歴書の添削や、面接の対策を受けられるとされています。応募先ごとの傾向をふまえた助言がもらえる、という案内も各社に見られました。
私は書類も面接も、すべて自分ひとりで準備しました。それで通過はしましたが、「これでいいのか」を確認できる相手はいませんでした。
年収の交渉を代わりにやってくれる
私にとって一番大きいのは、これです。
各社の公式情報によると、内定時の年収や条件について、本人に代わって企業と交渉する役割も担うとされています。
自分で応募していたとき、私は年収の交渉を一度もしませんでした。提示された金額をそのまま受け入れました。交渉していいものだと思っていなかったですし、仮に思っていたとしても、切り出す勇気はなかったと思います。
もちろん、交渉すれば必ず上がるという話ではありません。交渉の余地がない求人もあるはずです。ただ「交渉という選択肢が存在することすら知らなかった」のと、「知ったうえで交渉しない」のとでは、まったく違います。
料金と面談の詳細は別記事にまとめています
「なぜ無料で使えるのか」「初回面談で何を聞かれるのか」「相談だけの利用は可能か」。こうした仕組みの部分は、転職エージェントの使い方にまとめてあります。
それでも「使わない」が合理的なケースはある
ここまで書いておいてなんですが、誰もが使うべきだとは思っていません。
私自身が使わなかった人間ですし、それで転職もできています。使わないほうが合理的な場面は、確実にあります。
応募したい会社がすでに決まっている
行きたい会社が明確に決まっているなら、直接応募したほうが早いです。エージェントを挟む意味はほとんどありません。
その会社がエージェント経由の募集をしていない場合もあります。目的地が決まっているなら、まっすぐ行くのが最短です。
地元の中小企業を狙っている
これは私の実感でもあります。地域の中小企業の求人は、ハローワークに集まっている傾向があります。
企業側からすると、ハローワークへの求人掲載は無料です。一方で民間の職業紹介を使えば、採用時に手数料がかかります。そのため地域の中小企業にとっては求人を出しやすい場所になっており、ここでしか見つからない求人もあります。
地元密着で探すなら、ハローワークは有力な選択肢です。私が2回ともハローワークを使ったのは、結果的に理にかなっていた部分もあったと思っています。
自分のペースで進めたい
担当者がつくと、どうしても相手のペースが入ってきます。連絡が来る、求人を提案される、返事をする。それが負担に感じる人もいるはずです。
じっくり考えたい、急かされたくない。そういうときに自分だけで進められるのは、間違いなく利点です。私が「面倒だ」と感じていたのも、たぶんここでした。
今の私なら、こう使う
もし当時に戻れるなら、私はこういう使い方をすると思います。
相場を聞くためだけに使う
求人を紹介してもらうためではありません。「私の経歴だと、どのくらいの条件になりますか」と聞くために使います。
私に足りなかったのは、まさにこの一点でした。求人は自分で探せます。書類も自分で書けます。でも自分の市場価値だけは、自分では測れませんでした。
各社とも「相談だけの利用も可能」と案内しています。転職するかどうか決めていない段階でも、話を聞くことはできるとされています。
退職を決める前に使う
私は退職を先に決めてから、転職活動を始めました。退職日という期限がある状態で求人を探したわけです。
この順番は、今思うと不利でした。期限があると、じっくり比較する余裕がなくなります。
step
1在職中に、相場だけ確認する
step
2自分の希望条件が現実的か照らし合わせる
step
3そのうえで、退職の時期を決める
この順番なら、少なくとも「知らないまま決める」ことは避けられたはずです。
自分で探すのをやめる必要はない
ここは誤解されたくないところです。エージェントに登録したからといって、自分で探すのをやめる必要はありません。
ハローワークも求人サイトも、並行して使えます。自分で見つけた求人に応募しながら、相場だけエージェントに聞く、という進め方でも構わないはずです。
「どちらか」ではなく「両方」。私が当時わかっていなかったのは、この選択肢でした。
なお、複数のエージェントに同時登録する場合は、管理の手間や注意点もあります。そのあたりは複数登録のデメリットにまとめています。
自分の経歴だとどのくらいの求人があるか、聞いてみる
リクルートエージェント(公式)まとめ|使うかどうかより、「相場を知らずに決めない」こと
整理します。
私はエージェントを使わずに転職しました。狙った労働条件は手に入りました。その点で、自分で探す転職活動が間違っていたとは思いません。統計を見ても、使わない人のほうが多数派です。
ただ、ひとつだけ足りませんでした。提示された年収が妥当なのかを、自分以外の視点で確かめる手段です。
だから今の私が言えるのは「エージェントを使うべきだ」ではありません。「相場を知らないまま決めないでほしい」ということだけです。
その手段がエージェントである必要はありません。詳しい人が身近にいるなら、その人に聞けばいい。ただ私にはその相手がいませんでした。そしていなかったことに、決めた後で気づきました。
転職を決める前に確認したいこと
- 提示された年収が、自分の経歴に対して妥当か確かめた
- その判断を、自分以外の視点でも確認した
- 年収の交渉ができる余地があるか把握した
- 非公開求人も含めて、選択肢を見たうえで決めた
- 退職の時期を、比較する時間が残る形で設定した
- 自分で探す方法と、人に相談する方法を両方検討した
ひとつでも「していない」があるなら、決める前に一度立ち止まる価値はあると思います。私はそれをせずに決めて、後から考え込むことになりました。
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