転職体験談

転職で年収が下がった|残業は減ったのに不安が消えなかった理由

転職で年収が下がり、残業は減ったのに不安が消えない様子を表したイラスト

「年収は下がってもいい。そのかわり、もっと休める会社に移りたい」

数年前の私が、本気でそう考えていました。そして実際に、その通りの転職をしています。

結果はどうだったか。残業は月20〜40時間ほどから、平均10時間前後まで減りました。有給休暇も、前の会社では取りにくかったのが、今は使いきれるくらい取れています。狙っていた条件は、きちんと手に入ったわけです。

それでも、転職してしばらく経ってから、想定していなかった不安が出てきました。

毎日遅くまで残業して、休みもなかなか取れない。正直、年収が少し下がってもいいから、もっと時間に余裕のある働き方がしたいです。
その気持ち、よくわかります。私もまったく同じことを考えて転職しました。残業は実際に減りましたよ。ただ——想定していなかったことが、ひとつだけありました。

この記事のポイント

  • 「年収は下がってもいい」と考えて転職した、私自身の記録です
  • 狙った条件(残業の削減・有給の取りやすさ)は、実際に手に入りました
  • ただし年収は大きく下がり、家族を養う立場では不安の方が大きくなりました
  • 振り返って足りなかったのは、自分の適正年収を客観的に知る手段でした

なお、この記事は私自身が経験したことだけを書いています。私は転職エージェントを使ったことがありません。使っていないサービスについては、公式に公開されている情報をもとに紹介します。

「年収は下がってもいい」——そう考えて転職しました

退職を先に決めてからの転職活動だった

私の転職活動には、ひとつ大きな特徴がありました。先に退職を決めてから、次を探し始めたということです。

退職の意思を固め、辞める日が決まった。その状態で求人を見始めました。つまり最初から「この日までに次を決めたい」という期限がありました。

この進め方が良かったのか悪かったのか、今でも判断がつきません。ただ、時間の制約が判断に影響したことは間違いないと思っています。

優先したのは「残業が少ない・休みが取れる」だった

前職は製造業で、残業は月20〜40時間ほどでした。それに加えて、有給休暇が取りにくい雰囲気があったのが正直つらいところでした。制度としてはあるのに、実際には使いにくい。そういう職場です。

だから会社選びの軸は、はっきりしていました。年収は下がってもいいので、残業が少なくて、休みがちゃんと取れるところ。この一点です。

今でも、この軸そのものが間違っていたとは思っていません。働く時間を取り戻したいという気持ちは本物でしたし、実際にそれは手に入りました。

エージェントは使わず、自分で求人を探した

転職活動では、ハローワークと転職サイトを使いました。ただ、どちらも自分で検索して、自分で応募するという使い方だけでした。

転職エージェントは使っていません。当時は「わざわざ人に相談するほどのことでもないだろう」と思っていました。求人は自分で見ればわかる、と。

この判断が後になって効いてくるのですが、それは記事の後半でお話しします。

結果:狙った条件は手に入った

残業は月20〜40時間から、10時間前後になった

転職してまず変わったのは、残業時間です。

前職では月20〜40時間ほどだった残業が、今は月0〜20時間、平均すると10時間前後になりました。単純に見て、半分以下です。

平日の夜に時間ができました。これは狙っていた通りの結果です。

転職前後の残業時間の変化 前職は月20〜40時間、現職は月0〜20時間で平均は10時間前後。記事執筆者本人の実績値。 転職前後の残業時間の変化 前職(製造業) 20〜40時間 平均10時間前後 現職(製造業) 0〜20時間 0 10 20 30 40 (時間/月) ※ 記事執筆者本人の実績値です。統計データではありません
記事執筆者本人の実績値(前職・現職いずれも製造業)。公的統計ではありません。

休日日数は変わっていない。変わったのは「有給の取りやすさ」だった

ここは、自分でも転職してから気づいたことです。

会社が定めている休日日数そのものは、前職とほとんど変わっていません。年間休日の日数だけを比べたら、ほぼ同じです。

では何が変わったのか。有給休暇の取りやすさでした。

前の会社では、有給は取りにくいものでした。今の会社では、使いきれるくらい取れます。同じ「休み」でも、意味がまるで違いました。

つまり私は「休みが多い会社」に移ったのではなく、「休みを実際に使える会社」に移ったということになります。

同じ業種でも、会社によって違う

厚生労働省の調査によると、年次有給休暇の取得率は全産業の平均で66.9%です。労働者1人あたりの平均で、付与された18.1日のうち12.1日を取得しています。

そして製造業の取得率は72.8%。全産業の平均を5.9ポイント上回っています。産業別で見ると、最も高いのは電気・ガス・熱供給・水道業の75.2%、最も低いのは宿泊業・飲食サービス業の50.7%でした。

出典:厚生労働省「令和7年就労条件総合調査」(令和6年1年間の状況・2025年12月19日公表)

産業別 年次有給休暇の取得率 16産業の有給取得率。最高は電気・ガス・水道の75.2パーセント、最低は宿泊・飲食サービスの50.7パーセント。製造業は72.8パーセントで全産業平均66.9パーセントを上回る。 全産業平均 66.9% 電気・ガス・水道75.2% 鉱業・採石業74.3% 製造業72.8% 金融業・保険業72.8% サービス業(その他)69.7% 医療・福祉68.4% 情報通信業66.9% 学術研究・専門技術66.8% 不動産・物品賃貸65.5% 運輸業・郵便業65.3% 建設業60.7% 教育・学習支援60.5% 卸売業・小売業59.9% 生活関連サービス・娯楽59.6% 複合サービス事業57.1% 宿泊業・飲食サービス50.7% 0 20 40 60 80 (%) 出典:厚生労働省「令和7年就労条件総合調査」(令和6年1年間の状況)
出典:厚生労働省「令和7年就労条件総合調査」(令和6年1年間の状況・2025年12月19日公表)。取得率は「取得日数計/付与日数計×100」で算出されたもの。産業名は表示の都合により一部短縮しています。

この数字を見たとき、少し複雑な気持ちになりました。

製造業は、業界としてはむしろ有給を取りやすいほうなんです。それでも私の前職は取りにくかった。同じ製造業でも、会社によってここまで違うということになります。

そしてもうひとつ。求人票に書かれている「年間休日◯日」を見ても、この差はわかりません。私が転職前に見ていたのは、まさにその数字だけでした。

参考:年間休日の平均

同じ調査では、年間休日総数は1企業平均で112.4日、労働者1人平均で116.6日となっています。いずれも1985年以降で最も多い水準です。

出典:厚生労働省「令和7年就労条件総合調査」

条件面では、転職は成功している

ここははっきり書いておきます。労働条件という点では、私の転職は成功しています。

残業は半分以下になり、有給も取れるようになった。狙っていたものは手に入りました。この記事は「転職に失敗した話」ではありません。

事実の整理

  • 狙った条件(残業削減・有給の取得)→ 達成できた
  • 想定していた年収ダウン → 実際に起きた
  • 想定していなかったもの → 次の章でお話しします
じゃあ、成功じゃないですか。何が問題だったんですか?
条件は本当に手に入りました。問題は、私が「年収が下がる」ということを、数字としてしか考えていなかったことでした。

それでも不安が残った理由

年収が大きく下がった

転職して、年収は下がりました。これは想定通りです。最初からそう決めて動いていたので、驚きはありませんでした。

ただ、想定していたより、生活に対する影響が大きかったというのが正直なところです。

「下がってもいい」と「実際に下がる」は別だった

この記事で一番お伝えしたいのが、ここです。

転職前の私は「年収が減ってもいい」と考えていました。そう自分に言い聞かせて、納得もしていました。

でも今振り返ると、あれは決意であって、試算ではなかったんです。

「下がってもいい」と思うことと、実際に毎月の手取りが減った状態で生活することは、まったく別のことでした。頭で受け入れるのと、生活の中で受け止めるのとでは、重さが違います。

養う家族がいると、判断の重さが変わる

私は結婚していて、子供もいます。

自分ひとりの生活なら、「まあ、なんとかなるか」で済んだかもしれません。実際、独身のときの私ならそう考えたと思います。

でも、養う立場になると前提が変わります。自分が受け入れた年収ダウンの影響を、自分だけが引き受けるわけではないからです。

この視点が、転職を決めるときの私には抜けていました。

転職で年収が下がる人は、実は多数派ではありません

厚生労働省の調査によると、転職した人が前職の賃金と比べてどうなったかは、次のような内訳でした。

  • 増加:40.8%(うち1割以上の増加が28.2%)
  • 変わらない:25.5%
  • 減少:31.0%(うち1割以上の減少が21.9%)

「増加」した人の割合が、「減少」した人を9.8ポイント上回っています

出典:厚生労働省「令和7年雇用動向調査」(令和7年=2025年1年間)

転職入職者の賃金変動 増加40.8パーセント、変わらない25.5パーセント、減少31.0パーセント、不詳2.7パーセント。増加が減少を9.8ポイント上回る。 転職した人の賃金は、前職と比べてどう変わったか 増加 変わらない 減少 40.8% 25.5% 31.0% 不詳 2.7% うち「1割以上の増加」は 28.2% / うち「1割以上の減少」は 21.9% 「増加」が「減少」を 9.8ポイント上回る 出典:厚生労働省「令和7年雇用動向調査」(令和7年=2025年1年間)
出典:厚生労働省「令和7年雇用動向調査」(令和7年=2025年1年間)。転職入職者のうち前職雇用者で調査時在籍者について集計したもの。3区分の合計は97.3%で、残る2.7%は「不詳」です。

この数字を後から知ったとき、少し考え込みました。

私は減った31.0%のほうに入ったわけです。それは事実として受け止めています。ただ、減ることが最初から決まっていたわけではなかった、ということでもあります。

振り返って足りなかったのは「相場を知ること」

自分で求人を検索するだけでは、比較対象が自分の中にしかない

では、何が足りなかったのか。今の私が思うのは「相場を知らなかった」ということです。

求人票を見れば、年収の欄は書いてあります。でもその金額が、自分の経歴に対して妥当なのかどうかを判断する基準を、私は持っていませんでした。

検索して出てくるのは「その会社が出している条件」です。「私という人間の市場価値」ではありません。この2つは、似ているようでまったく違います。

提示された年収が妥当かを判断する材料がなかった

転職サイトもハローワークも、求人を探す機能はしっかり提供してくれます。私はその機能を使って、たくさんの求人を見ました。

ただ、どちらも「あなたの経歴なら、このくらいが相場ですよ」とは教えてくれません。当然です。それは求人を探す機能ではないからです。

結果として私は、提示された条件を、自分の中の物差しだけで判断していました。前職の年収と比べて高いか低いか。判断材料はそれだけです。

退職を先に決めたことで、比較する時間も削られた

ここに、最初にお話しした「退職を先に決めた」ことが効いてきます。

退職日という期限があると、じっくり比較する余裕がなくなります。私も「この日までに次を決めたい」という気持ちのほうが先に立っていました。

退職を伝える前から動き始めていれば、時間の使い方は違ったかもしれません。このあたりは、退職してから探すか、在職中に探すかという別のテーマになるので、また改めて書きたいと思います。

相場って、どうやって知るんですか?
私はそれを知らないまま決めてしまいました。今なら、キャリアアドバイザーに相談するという手段もあったとわかります。使っていないので体験としては語れませんが、公式情報を調べた結果は別の記事にまとめました。

▶ 転職エージェントを使わなかった私が、今なら使う理由

「年収は下がってもいい」と思っている人へ、3つの確認

ここからは、当時の自分に伝えたいことを3つ書きます。「年収は下がってもいい」と考えている方に、そのまま当てはまるはずです。

下がった後の生活を、具体的な数字で試算したか

まず、これです。「下がってもいい」を決意で終わらせず、数字にしてみてください。

私がやっていなかったのが、まさにこれでした。年収ベースで「これくらいなら大丈夫だろう」と考えただけで、月々の手取りに落とし込んでいませんでした。

step
1
今の手取りを、月単位で正確に把握する

step
2
想定している年収での手取りを試算する

step
3
家賃・光熱費・保険といった固定費と並べて、差額がどこに効くか確認する

年収の差額を12で割るだけでも、印象はかなり変わります。私はそれをやらないまま決めました。

計算するのが、正直ちょっと怖いんですよね。数字を見たら転職できなくなりそうで。
その気持ちもわかります。ただ、知らないまま決めても、下がった後に同じ数字と向き合うことになります。先に見ておくほうが、選べる幅は広いはずです。

その条件は、年収を下げないと本当に手に入らないのか

これは、当時の私がまったく考えていなかった視点です。

「残業が少ない会社は、その分年収も低い」。私はなんとなくそう思い込んでいました。だから最初から「年収は下がるもの」という前提で探していたのです。

でも、先ほどの調査結果を思い出してください。転職した人のうち、賃金が減ったのは31.0%。増えた人は40.8%です。

もちろん、これは「転職すれば年収が上がる」という話ではありません。人によっても、タイミングによっても違います。ただ少なくとも、下がることが決まっているわけではないということは言えます。

今思えば、下がることを前提にした時点で、上がる可能性を自分で閉じていたのかもしれません。

自分の適正年収を、第三者に確認したか

そして3つめ。ここが、自分で探すだけの転職活動における一番の弱点だと思っています。

自分の経歴にどのくらいの求人があるのか。提示された金額は相場に対してどうなのか。これを自分以外の視点で確認する機会が、私にはありませんでした。

転職エージェントの仕組み(公式情報より)

転職エージェントは、求職者は無料で利用できます。企業側が採用の成功報酬を支払う仕組みになっているためです。

そのため「相談だけ」の利用もできるとされています。詳しい仕組みや面談の流れは、別の記事でまとめています。

私自身は使わずに転職したので、体験としてお話しできることはありません。ただ、「自分の市場価値を自分以外の誰かに聞く」という選択肢があったことは、今ならわかります。

企業規模による違いもあります。先ほどの調査では、有給の取得率は従業員1,000人以上の企業で69.0%、30〜99人の企業で64.9%でした。会社を選ぶときに見ておきたい観点は、年収以外にもいろいろあります。

自分の経歴でどんな求人があるかを見てみる

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まとめ|条件で選ぶのは間違いではない。検証しないことが問題

最後に整理します。

私は「年収は下がってもいいから、残業が少なくて休みが取れる会社へ」と考えて転職しました。そしてその条件は実際に手に入りました。残業は月20〜40時間から10時間前後になり、有給も使いきれるくらい取れています。

それでも不安が残ったのは、「年収が下がる」ということを決意で済ませて、数字で確かめていなかったからです。そして、自分の年収が相場に対してどうなのかを、誰にも確認しないまま決めてしまったからでした。

条件を優先して会社を選ぶこと自体は、間違いではないと今も思っています。問題は、その判断を検証しなかったことのほうにあります。

転職前に確認しておきたいこと

  • 「年収が下がってもいい」を、決意ではなく数字で試算した
  • 下がった後の手取りと、固定費との差額を確認した
  • 扶養している家族がいる場合、その影響も含めて考えた
  • 希望する労働条件が、年収を下げずに手に入る可能性を検証した
  • 自分の経歴に対する年収の相場を、自分以外の視点で確認した
  • 求人を「探す」だけでなく「比較する」時間を確保した
  • 退職日を先に決める場合、その制約を織り込んだ
  • 求人票の年間休日数だけでなく、有給の取りやすさも確認した

最後のひとつは、私が転職してから気づいたことです。求人票には書かれていない情報こそ、実際の働きやすさを左右します。

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